『週末はギャラリーめぐり』をしたくなる

かなり前に「読みます!」宣言をした、『週末はギャラリーめぐり』という本を読みました。
久々に自分の興味と本の内容が一致する、という気持ちの良い読書体験ができました。
著者の山本冬彦さんは、アートソムリエを自認し、30年間で1300点もの芸術作品を収集されたという方です。
山本さんの蒐集のきっかけは、マンションを購入した際に壁に飾る絵を探したこと、というのですから、まさに趣味を極めた方です。

そんな著者の手がけた本書は、まさにアート初心者、必読の書です。
現代アートの美術館の紹介から始まり、美術品の種類の説明、都内にある主要な画廊の紹介、画廊やギャラリーでのマナー、美術品蒐集の始め方までと、アート初心者が知りたいことを的確に捉えた内容になっています。

たとえば、初心者にありがちな以下の疑問にも本書では答えてくれています。
・美術品の保存って難しいのでは?
→ きちんと額に入れ、日光や冷暖房の風をダイレクトに当てなければ神経質にならなくても良い。

・サイン帳(芳名帳)ってなに?
→ 個展を開催した作家にとって、どれだけの人が個展に来てくれたか、という記録になる。
また、住所を書くと画廊が開催するショーの知らせを送るのにも使用する。

・最初にどんな作品を買ったらよい?
→ 無名で若手作家の本物の作品を購入する。もちろん、自分の目と頭で価値判断を下して買うこと。

特に私に強い印象を残したのは、著者のコレクションにたいする考えをあらわした以下の文章です。

お金に任せて集めたコレクションの中には、世間で有名な作家の作品ばかりをすすめられるままに集めたもので、そこには集めた人の独自の眼がまったく感じられない、つまらないものが時々見受けられます。
コレクションを雑誌にたとえると、どんなに有名な人気作家を執筆陣に集めて文章を書いてもらっても、その雑誌のテーマやコンセプトが明確で独自性がなければ立派な雑誌はできません。
コレクターとは雑誌の編集者であり、コレクションとはまさに編集という創造活動なのです。 (p.139)

コレクションを創造活動である、とする著者の考え方には共感をおぼえます。
私の場合は、アートではありませんが、読書が趣味なのでよく本を購入し読みます。
社会人になってからは、ビジネス書を中心に読んでいるので、最近まではビジネス書が本棚の大半を占めていました。
しかし、現代アートに興味をもつになってからは、アート関連の本を購入して読む機会が増え、徐々に本棚を侵食してきました。
そのような本棚を眺めていると、自分の思考や嗜好の変化、そして、現在の自分の頭の中を取り出して眺めているような気分になります。
そして、その本棚が自分のひとつの作品に思えてくるのです。
こうした点が、著者のコレクションにたいする思いに共感をおぼえる点です。もちろん、お金のかかり方は天と地ほどの差がありますが。。。

また、こうしたコレクションのたいする思いを見ると、「じぶんも集めてみたい」という思いが強くなってきます。
今年の5月に現代アートと面白みに気づくまで、「アートを買おう」ということなど微塵も考えたことがありませんでした。
それは、触れてきたアートがルネサンスやバロックなどの売り買いどころか、売買すらされないような価値をもった作品を中心に美術館で鑑賞してきたからです。
そして、現代アートに興味をもって「作品が買える」という、当たり前の事実に衝撃を受けてなお、作品を購入するまでにはいたりませんでした。
しかし、著者の言葉を見ると、購入する、集める、という行為そのものが自分自身を表現する1つの手段であると気づかされました。
絵を描くこと、彫刻を削りだすこと、映像を切りとり表現することをあきらめてしまった私にも、芸術にかかわりながら表現する手段がある、このように考えると俄然、「コレクションをはじめたい」と思わされるのです。

とはいえ、はっきりいってお金はありません。
ですので、現代アートを見る際には、買わないまでも「買うか、買わないかの視点で作品をみる」ことを実践したいと思います。

「自分だったらこの作品を買うだろうか」
「この作品だったら買ってもよいとおもうけど、なぜ買いたいと思ったのだろう」

こうしたこと考えながらアートを眺めることで、自分のアートにたいする考え方や趣味・嗜好が見えてくるはずです。
特に何も考えず、偶然にまかせて「いいな!」と思える作品に出会える、というのも素敵な経験だと思います。
しかし、それだけで放っておいてしまうと、出会いだけで終わってしまいます。
素敵な作品に出会ったら、出会いだけで終わらせてしまうのはもったいない。
作品の魅力と自分の趣味・嗜好のどこがあっていたのか、を考えると、その作品とより深い付き合いができそうです。
また、自分の好きな作風の作品たちに出会う機会も増えそうです。

「鑑賞するだけのアート」から「購入を考えるアート」へ、ちょっと進んでみたいと思います。

最後になりますが、著者の山本冬彦さんのコレクションが、なんと!東京で見られるチャンスがあります。
場所は千駄ヶ谷駅ちかくの佐藤美術館で、1月14日(木)より開催、とのことです。
アートソムリエのコレクションに興味がある方は、是非、足を運んでみてください。

【作家情報】
◆山本冬彦(Huyuhiko Yamamoto)
・アートソムリエ・山本冬彦
・山本冬彦, 『週末はギャラリーめぐり』, ちくま新書, 2009年
【展覧会情報】
・佐藤美術館-Exhibition_「山本冬彦コレクション」展
・芸力-検索結果_「山本冬彦コレクション」展

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コメント / トラックバック2件 to “『週末はギャラリーめぐり』をしたくなる”

  1. 山本冬彦 Says:

    本のご紹介ありがとうございます。
    来年のコレクション展のご招待券をお送りしますので、差し支えなければ上記アドレスあてにご住所とお名前をメールしてください。

    • keisyuogasawara Says:

      わざわざコメントをいただきまして、ありがとうございます!!
      著者の方にエントリを読んでいただけると思っていなかったので、大変、うれしいです。
      お言葉に甘えて、連絡をさせていただきます。

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