Archive for 2010年3月

プロジェクトの成否はレガシーコードの発生率で判断する

3月 27, 2010

レガシーコード、その定義はいろいろあると思います。
ここでは、メンテナビリティが低いコード、と定義したいと思います。
メンテナビリティの低いコードは、

何故そうなっているのか、コードの意図(目的)がわからない
あまりに大きすぎるメソッドで変更できない(しづらい)
メソッド、変数の使用状況が確認できない(しづらい)

などの性質をもっています。
こうしたレガシーコードは、開発現場の余裕の無さ、から生まれます。
そして、余裕の無さは、開発者への過剰なプレッシャーが原因で生まれます。

ウォーターフォール開発にせよ、アジャイル開発にせよ、納期は定められます。
開発者は、時間というプレッシャーから逃れることはできません。
また、お金の心配もあるかもしれません。
常に会社の経営が安定しない場合、開発者はお金で頭を悩ませることになります。
こうなると開発に集中できません。

時間やお金のプレッシャーをすべて取り除くことはできません。
ただ、開発者がかかえるこうしたプレッシャーを理解していないと、開発者に過剰なプレッシャーをかけてしまうことになります。
特に納期のプレッシャーは、開発者にかかりやすいのではないかと思います。
私も経験があります。笑

とりあえず動かすためにこのコードで書こう
同じような処理だからコピペしてしまおう

時間が無いなかでこのように考えて書いたコードが、そのまま納品され、動いている、こうした経験は誰にでも(?)あるのではないでしょうか。
そして、こうしたコードが、メンテナビリティの低い、レガシーコードになります。

レガシーコードは、開発チームのベロシティの低下につながります。
それは、メンテナビリティの低いコードの保守や機能追加による改修には、多くの時間と労力が取られるからです。

そして、開発チームのベロシティの低下は、会社、という組織の運営に大きな影響を与えます。
というのは、単純に言ってしまうと、受託開発という仕事では、いくつのプロジェクトをこなすことができるか、が会社の売り上げにつながるからです。
チームの生産性の低下は、プロジェクトを完了する数の低下を招き、結果、会社の売り上げの低下につながります。
こうしたことから、レガシーコードは開発者にとっても、会社にとってもプラスはありません。

しかしながら、レガシーコードは作られます。

それは、

会社がもっと大きな売り上げを立てたいため
顧客が前倒しで機能を追加したいため

という理由により、無理な納期、過剰な機能の追加により開発者に納期というプレッシャーをかけてしまうことから作られます。
また、

技術者のスキルが低いため

という単純に開発者の怠慢によっても作られます。開発者の視点からは、この点が結構、抜け落ちることも多いようですね。
こうした事情から作られるレガシーコードは、その時点ではプラスに働くように見えるだけの、利益の前借、もしくは負債の先送りに過ぎません。

ですので、あるプロジェクトが成功したか否かについては、納期が守られた、バグの検知率や修正率が計画どおりだった、ということだけでなく、

レガシーコードが埋め込まれていない

という点にも注目すべきでしょう。

ただし問題は、

レガシーコードの発生率をどのように量るか

という点です。

具体的な方法がちょっと思い浮かびません。
おそらく現時点では、ツールもないでしょう。

コスト、品質、納期の3つでプロジェクトの成功をはかろう、という視点において、品質は、開発中とリリース後のバグの発生率ではかられることが多いです。
しかしながら、レガシーコードの発生率が低い、という視点もプロジェクトの成功を判断する1つの視点として加わるべきだと思います。
レガシーコードは将来のバグの発生率を高め、生産性の低下を招きます。それは、品質とは無関係ではありません。
品質を担保するには、開発者はもちろん、経営層、顧客にも、レガシーコードの発生率、というあらたな基準をもってもらう必要があるでしょう。

ちなみにこの話は、CSM研修で講師バズさんや参加者の方から聞いたお話をまとめたものです。
が、個人的にメモした内容から書きおこしたものですので、内容の不備や間違いは、すべて私の責任です。

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ジョン・ルーリーと福田尚代の作品を楽しむ

3月 22, 2010


2010/03/20(土)にワタリウム美術館で開催されている「ジョン・ルーリー」展、そして、国立新美術館で開催されている「ARTIST FILE 2010」展を鑑賞してきました。

本当のことを言いいますと、ワタリウム美術館のある青山の外苑前には「おいしいハンバーガー屋がある」と聞いて出かけたのです。
しかし、その店に向かう途中に近代的なビルでありがなら、少々古めかしい印象をたたえたワタリウム美術館を発見し、興味がそそられたので寄り道することにしたのです。
結果、寄り道して正解でした。
美術館を訪ねるのが初めてなら、ジョン・ルーリーの作品を観るのも初めてでしたが、非常に見応えがありました。
ジョン・ルーリーの皮肉たっぷりで、退廃的な作品と、ひび割れを起こしている窓ガラスや小さなエレベーターがあるところどころ古めかしい部分がある美術館の雰囲気がよくあっていて素敵でした。
展覧会の満足感たるやたいしたもので、当初の目的のハンバーガーを食べることを忘れて、次の目的地、国立新美術館のある乃木坂へ向かわせるほどでした。

国立新美術館で開催されている「ARTIST FILE 2010」展は個人的に思い入れの強い展覧会です。
というのも、私が現代アートに興味を持ったのが、去年、開催されていた「ARTIST FILE 2009」展を鑑賞してからだからです。
去年の展覧会の空いた会場で、齋藤芽生や津田実生などの作品をゆっくり鑑賞して、

現代アートおもしろい!

と感化され、それ以降、好んで現代アートの展覧会へ足を運ぶようになりました。
そうした作品との出会いが、今回も必ずある、と期待して会場を訪れました。
結果、ここでも当たり。
福田尚代というアーティストの素晴らしい作品を鑑賞することができました。

<皮肉、退廃、ときどきさわやか?>
ジョン・ルーリーというアーティスト。
もともとは「ラウンジ・リザーズ」というバンドのサックス奏者として活躍し、80年代、90年代にはモデル、俳優としても活躍した人。
ジャズに詳しくないのでわかりませんが、自らの音楽を「フェイク・ジャズ」と呼んでいて、80年代から、かの有名なバスキアなどと絵を描いていたらしい。
90年代後半には、難病を患って音楽活動と俳優としての活動を休止しています。
近年、80年代から描いていた作品を含めて個展を開催し始めます。

作品は、皮肉っぽくユーモアに富んでいる、という印象です。
作品のタイトルも長く、個性的なものが多いです。
たとえば、

『男の手がフォークになってしまった。彼を信じるな。』
『親愛なる神様へ、私はあなたに直接質問をしました。たった一度でいいので、お答えください。真心をこめて。ヴァーンより』

などが挙げられます。

色調は暗く、それが退廃的な雰囲気をかもし出しています。
モティーフは鳥やウサギなど動物が多かったように思えます。
なんとなく、世界を斜めにのぞき、人嫌い、の印象をうけます。
だからこそ、かも知れません。描かれる世界には、独自の世界観があります。

私が見せられたのは、タイトルが長い作品として上で取り上げた、『親愛なる神様へ、私はあなたに直接質問をしました。たった一度でいいので、お答えください。真心をこめて。ヴァーンより』という作品です。
暗めの作品が多いなか、画面全体が彩度の高い、青と緑が画面の全体を占めている作品です。
草原たたずむ男が大きな青空を見上げている、という場面としては、単純な作品です。
しかし、暗い調子の作品が数多く飾られる空間のなかでは、その単純で明るい作品が異彩を放ちます。
そして、「ヴァーンはちゃんと答えを得られたのか、おそらく得られなかったんじゃないかな」という不思議な失望感をおぼえるのです。

明るいながらどこか不安と失望を感じさせる。
皮肉で、不安が支配する、退廃的な世界。
ジョン・ルーリーの作品は、逃れられない暗さをもっている、と感じました。

<文字と絵画の融合>
国立新美術館で目を奪われたのは、福田尚代というアーティストの作品です。
読書好き、そして美術好きの私としては、その2つの好きなものが融合した作品に魅せられてしまいました。

手紙や名刺に刺繍を施した作品。
既存の文章をつかいながら、新たな物語を生み出す作品。
文字によって描かれる淡い色のグラデーションの作品。
消しゴムを素材にした作品。

絵画、彫刻という芸術作品において、文字、文章は、末席に追いやられる傾向にあります。
というのは、文字や文章は説明的だからです。
文字が作品のなかに登場し、作品の世界観や価値を説明してしまうと、鑑賞者は興ざめです。
お笑い芸人が、自分のネタが何故面白いか、をネタをやらずに説明するようなものです。

もちろん、その作品を創作したアーティストの人となりや価値観は、作品の魅力や価値を知ることの重要な手がかりです。
だからこそ、キャプションやカタログなどでは、アーティストの人となりや活動の歴史を説明します。
また、作品そのものの魅了を説明します。

特に、絵画や彫刻ともなると、文字や文章は作品の外に置かれたり、作品の中に登場するとその意味を奪われたりします。

しかし、福田尚代の作品は、文字が主役です。
文字には意味があり、それらが作品を魅力と価値の一翼をになっています。
文字や文章は単なる記号ではなく、見せるものであり、その意味を解釈する対象として作品に登場します。

『不忍 蜘蛛の糸』という作品は、遠めで観るとアクリルの絵の具で描かれた、美しいグラデーションの抽象画です。
しかし、近づいてみてゆくとそれが線や点で描かれていないことに気づきます。
小さく書かれた「蓮」の連続が絵画のグラデーションを生み出しているのです。
描かれた絵画は抽象的なグラデーションでしかありません。
しかし、それらが「蓮」という極楽浄土を象徴する文字で描かれていることがわかると、その作品の意味が理解することができるようになるのです。

説明的でなく、しかし意味のすべてを取り除かれてもいない、絵画のなかの文字。
微妙な均衡によって支えられるその存在は、繊細でやわらかい作品をつむぎだしています。

<パスポート制っておもしろい>
最後にワタリウム美術館のジョン・ルーリー展で、はじめての経験をしました。
それは、パスポート制のチケットです。
名前を書いておけば、会期中なんどでもその展覧会を鑑賞できる、というものです。

家の近所にある美術館ではないので、そう何度も足を運べる、というわけではないですし、実際、近くにあっても何度も足を運ぶことはないかもしれません。
しかしながら、チケットを財布に入れておいたら、ちょっと時間があったときに足を運んでみよう、と思うかもしれません。
そうすれば、足を運んだついでに、美術館のミュージアム・ショップで買い物をするかもしれません。
また、カフェで食事を取るかもしれません。

1回以降はタダ、という有効なマーケティングを実践している美術館、という意味でもワタリウム美術館はおもしろい存在です。

【会場情報】
◆ワタリウム美術館-「ジョン・ルーリードローイング」展
http://www.watarium.co.jp/exhibition/index.html
◆TAB-「YOU ARE HERE」
http://www.tokyoartbeat.com/event/2010/A740

◆国立新美術館-「アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち」展
http://www.nact.jp/exhibition_special/2009/03/af2010.html
◆TAB-「アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち」展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/E961

【作家情報】
◆ジョン・ルーリー(John Lurie)
・strange&beautiful music
http://www.johnlurieart.com/art/

◆福田尚代(Naoyo Fukuda)
・福田尚代の回文と美術
http://naoyon.web.fc2.com/

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月を目指して(4)~CSM研修に参加してきた~

3月 16, 2010

2010/3/15(月)と2010/3/16(火)にかねてより参加を熱望していたCSM研修へ参加してきました。

一言で感想を言うのであれば、

楽しかった!

二言なら、

楽しかった!
参加してよかった!

です。

正直、2日とも、朝9時から18時までの長丁場の研修で大変、疲れました。
しかし、講師のバスさんのお話を聴いたり、ワークショップをこなしたり、参加者の人たちと意見を交換したりと、脳みそとやる気にたくさんの刺激をうけて帰ってこれました。

CSM研修に参加して、

やはり「楽しく」仕事をしたいからScrumなのだ

と強く思いました。

私はシステム開発がやりたくて今の会社に入社したわけではありません。
たまたま入社したい、と思い、入社できた会社がシステム開発会社だったというだけです。
そんな私が、高額な研修費を自腹を切って払ってまで、CSM研修を受けたのはなぜだろう、ということを研修に参加して考えさせられました。
これはおそらく、他の参加者の人たちの多くが会社のトップダウンでScrumを開発に取り入れようとして、研修に参加されていて、わざわざ自主的参加している自分がちょっと浮いた存在に思えたからかもしれません。

そして、なぜ、Scrumなのかということ考えると、やはり今の仕事を「楽しく」したいからなのです。

ずばり言ってしまえば、今のプロジェクトのやり方、仕事の進め方では、システム開発は「楽しくない」のです。
システム開発、とりわけ自分の会社におけるプロジェクトの現実を見ていると、ウォーターフォール開発(以下、WFと書きます)は現実的でない、と思わされます。
WFがありか、なしかの議論ではなく、自社のスキル、マインドにもとづいてWFのプロセスによって、顧客の要望に対応したシステムを作ろうとしても、現実的ではないということです。
顧客の要望は常に変化し、なかなか要求が固まらない状況で、作業が可能な分だけ前倒して詳細設計をし、実装をする、という作業が求められる、という現実。
そうした現実を、WFという基準に無理やり当てはめて管理することは、現実的ではないはずです。
しかし、WFという1つの標準しかしらない、とりいれられないために、現実をむりやりその基準にあわせて管理せざるを得ない。
そうした無理を可能にしているのは、現場を含めてそのプロジェクトに関わる人たちの頑張りであり、忍耐です。

たしかにどのようなことにおいても、頑張りや忍耐が必要になるときがあります。
しかし、それが1ヶ月、2ヶ月ではなく、半年、1年と続いてしまうのは、やはりおかしいことです。
そして、そんな仕事は絶対、楽しくはないのです。

私は、「楽しい」仕事を追いかけるのではなく、「楽しく」仕事をすることを目指すことが重要だと思っています。
というのは、自分にとって「楽しい」と感じられるものは、多くないと思うからです。
たとえばコードを書くのが好き、という人はとても多いですが、では、どのような言語でも、どのような開発環境でもコードが書ければよいのか、といえばそうではありません。
コードを書くのが好き、という人ほど、「言語はJAVAじゃなきゃ」「IDEはEclipseじゃなきゃ」「SCMはVSSよりSVNでしょ」とこだわりがあります。
そして、それが満たされていないと、不満がつのってコードを書いていても「楽しい」とは思えなくなってしまう、という人を多く見かけます。

必ずしも、コードをかけるから「楽しい」わけではないのです。
おそらく、コードを書くのが楽しい、という人は、「楽しく」コードを書いてきた経験が多い、ということなのだと思います。
たしかにドキュメントの整理をするよりもコードを書くほうが楽しいとは思います。
が、それは常に「楽しい」ことでもないのです。
また、それが常に「楽しい」ことだとしても、それだけをやりつづけることはできません。
コードを書くのが好きで楽しいからといって、コードだけを書いているわけにはいきません。

「楽しい」ことをやり続けることが大変なうえに、「楽しい」ことが「楽しい」ことでありつづける、ということは難しいのだと思います。
コードを書くのが好きな人が、コードを書くだけの立場でいることは難しいですし、それの楽しさを維持するために、開発言語や開発環境を固定することは簡単ではありません。
ましてや、プロジェクトにおいては対人関係も絡んできます。
もしも、自分が望む開発言語と開発環境でコードだけ書いてても良い、といわれても周囲の人とうまくいっていなかったら、やはり「楽しい」仕事をしている、とはいえないでしょう。
そうなると「楽しい」ことを追求するというのは現実的ではないように思います。

むしろ、今、目の前にある状態をいかに「楽しく」できるか、ということを追求することが現実的なことだ思うのです。
コードを書いているから「楽しい」のではなく、「楽しく」コードが書けているから「楽しい」のだと思います。
コードを書くことに比べて、ドキュメントを書くのはつまらないかもしれません。
テストもつまらないかもしれません。
だったらそれを「楽しく」することを追求すればよい、私はそのように思うのです。
しかし、私が、今の会社で「楽しく」仕事をしようと思ったときに、WFやっていては無理だと感じたのです。
そして、Scrumを導入したほうが「楽しく」仕事ができると感じたのです。

それは、WFの手法にプロジェクトの現実を無理やり合わせて管理するよりも、現実にあわせてScrumにより開発プロセスを管理するほうが無理がないからです。
なにより、Scrumでは、自己管理によってプロジェクトを推進してゆくことで、自分の責任で自分の行動を選択することができます。
ですから、「楽しく」仕事をしようと思えば、自主的に行動を起こせます。
私が、Scrumという開発手法に可能性を感じているのは、プロジェクトの責任をメンバーが共有することで、メンバーたちでプロジェクトを管理、運営してゆく、自主性を尊重している点です。
どのような作業でも、人に押し付けられていたり、やらされている感があると、途端にその作業についての責任感を失い、やる気を失ってしまいます。
反対に、自分自身で選択したり、納得したりして取り組んでいる作業には、やる気と責任感を持って取り組めます。
そして、このやる気と責任感こそが、仕事や作業を「楽しく」するための最低条件だと思うのです。
また、プロジェクトに関わる人たちを尊重する、大切にする、ということも、やる気と責任感をもって仕事に取り組める環境を作ることなのだと思うのです。

CSM研修を受ける前から、「楽しく」仕事をするにはどうすればよいか、ということを常々考えてきました。
そして、Scrumの導入こそが、その第一歩になるとも考えてきました。
昨日と今日、CSM研修に参加して、その思いが確信に変わったように思います。

アジャイルであろうが、Scrumであろうが、「楽しく」仕事ができれば良い。
でも、現在の自社の環境とシステム開発の現場において、「楽しく」仕事をするには、Scrumの導入な必要なことなのだと思います。
2日間の研修を通じて学んだことを活かし、社内に少しずつ「楽しく」仕事をするための仕組みとして、Scrumを導入してゆきたい、と思います。

思うままに書きなぐったので、少々、おかしな文もありますが、ご容赦ください。
では。

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「VOCA」展であたらしいものの息吹を感じる

3月 14, 2010


2010/03/14(日)に、上野の森東京美術館で開催されている「VOCA」展を観に行きました。
「VOCA」展は1994年から毎年、開催されており今回17回目を迎える展覧会です。
推薦された40歳以下の若手作家が新作の平面作品を出展するという、ちょっとめずらしい企画の展覧会です。

平面といいつつも、写真や絵画ではなく彫刻のように石膏を削り込んだ作品、刺繍などの立体に近い作品も多く展示されていました。
また、齋藤芽生や名知聡子など、他の展覧会でも見かけたことのある作家さんの作品も展示されていました。
展覧会全体は、作品の点数も、毒気の強い作品も多くない、という印象で、こじんまりとした小さい美術館の上野の森美術館とよくあっていると感じました。
なによりも気鋭で新しいものを生み出そうとしている作家たちの作品が一堂に会した展覧会は、新たなものの息吹を感じさせてくれました。
その雰囲気が、冬を越して暖かくなってきた最近の春の陽気と相まって、心も体も暖かくなって帰ってくることができました。

なお、同じ会場では照屋勇賢の「ひいおばあさんはUSA」展が開催中でした。
まだ会場は準備中でしたが、展示されている作品を観ることができましたよ。

<気なる3人の作家>
今回、私が面白いと感じたのは以下の3人の作家です。
特に、中谷ミチコはVOVA奨励賞、清川あさみは佳作賞を受賞されており、今後も注目の作家だと思います。

◆中谷ミチコ
ちょっと寂しげで、無機質な少女の彫刻です。
しかし、平面作品の展覧会、なので普通の彫刻とは違います。
石膏のようなアツい板を彫りこみ、そこに少女の絵を描いてシリコンを流し込んだ作品です。
この作品が面白いのは、正面から作品を見つめているだけではわかりません。

作品の前を左右に移動しないといけません。
少女を見つめながら、作品の前を移動すると、右へ左へ少女の視線が追いかけてくるのです。

寂しげで無機質な少女の視線に追われ続けていると、途端に自分の立ち位置が不安定になっているように感じられ、恐怖を覚えます。
作品の雰囲気もさることながら、鑑賞者を追いかけ続ける視線をもつ、という少女に面白みと少々の恐怖を感じました。

◆市川孝典
和紙を線香で焼いて作られた作品です。
和紙と線香という素材がそうだからか、作品そのものも非常で繊細で静かな雰囲気です。
上記の中谷ミチコと同様に、単なる絵画、平面作品ではなく、紙に穴を開けるという、ある意味で立体の作品であり、そこに面白みを感じました。

水墨画のような濃淡を焼き色でつくるのは、大変だと思います。
が、その濃淡が作品に深みを与えます。
そして、繊細さを感じさせるその作業が作品に儚さを感じさせるのだと思います。

◆清川あさみ
作品を観ていて、マイケル・ジャクソンのBillieJeanを思い出しました。
ネオン街の写真にラメやビーズを刺繍を施していて、全体的には暗いのですが、ラメやビーズが煌びやかな雰囲気を与えています。
その雰囲気がまさに、少し後ろ暗い歌詞のBilleJeanにぴったりなのです。

作品にはとてもこまかく刺繍が施されています。しかし、繊細さを感じさせません。
どちらかというと、黒い世界と煌びやかさが歌舞伎町などの夜の歓楽街を連想させ、力強さを感じさせます。

力強く、官能的、まさに私がBillieJeanに感じている魅力をそのまま形づくったような作品でした。

<マイ・アートはHAZY DREAM>
もしも、購入できる資金があるなら購入したい作品、マイ・アートは清川あさみさんの『HAZY DREAM』です。
暗い雰囲気ですが、エネルギーがあふれていて、ぜひ部屋に飾ってBillieJeanを聴きながら作品をながめたい、と思いました。

久々に美術館へ行きましたが、やはり楽しかった。
綺麗で穏やかな作品を観ると心が落ち着き、激しくアクの強い作品をみると心が震える。
やはり時間を無理やりにでも時間を作って、美術に触れていたいものです。

【会場情報】
◆上野の森美術館-「VOCA」展
http://www.ueno-mori.org/index.html
◆TAB-「エレメント 構造デザイナー セシル・バルモンドの世界」展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/3B6D

【作家情報】
◆中谷ミチコ(Michiko Nakatani)
・Michikos-公式ホームページ
http://www.milmil.cc/user/miaart/
◆市川孝典(Kosuke Ichikawa)
・Kosuke Ichikawa-公式ホームページ
http://kosuke.tv-asakusa.com/index.html
◆清川あさみ(Kosuke Ichikawa)
・ASAMI-公式ホームページ
http://www.asamikiyokawa.com/

【次の予定】
※未定

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