ジョン・ルーリーと福田尚代の作品を楽しむ


2010/03/20(土)にワタリウム美術館で開催されている「ジョン・ルーリー」展、そして、国立新美術館で開催されている「ARTIST FILE 2010」展を鑑賞してきました。

本当のことを言いいますと、ワタリウム美術館のある青山の外苑前には「おいしいハンバーガー屋がある」と聞いて出かけたのです。
しかし、その店に向かう途中に近代的なビルでありがなら、少々古めかしい印象をたたえたワタリウム美術館を発見し、興味がそそられたので寄り道することにしたのです。
結果、寄り道して正解でした。
美術館を訪ねるのが初めてなら、ジョン・ルーリーの作品を観るのも初めてでしたが、非常に見応えがありました。
ジョン・ルーリーの皮肉たっぷりで、退廃的な作品と、ひび割れを起こしている窓ガラスや小さなエレベーターがあるところどころ古めかしい部分がある美術館の雰囲気がよくあっていて素敵でした。
展覧会の満足感たるやたいしたもので、当初の目的のハンバーガーを食べることを忘れて、次の目的地、国立新美術館のある乃木坂へ向かわせるほどでした。

国立新美術館で開催されている「ARTIST FILE 2010」展は個人的に思い入れの強い展覧会です。
というのも、私が現代アートに興味を持ったのが、去年、開催されていた「ARTIST FILE 2009」展を鑑賞してからだからです。
去年の展覧会の空いた会場で、齋藤芽生や津田実生などの作品をゆっくり鑑賞して、

現代アートおもしろい!

と感化され、それ以降、好んで現代アートの展覧会へ足を運ぶようになりました。
そうした作品との出会いが、今回も必ずある、と期待して会場を訪れました。
結果、ここでも当たり。
福田尚代というアーティストの素晴らしい作品を鑑賞することができました。

<皮肉、退廃、ときどきさわやか?>
ジョン・ルーリーというアーティスト。
もともとは「ラウンジ・リザーズ」というバンドのサックス奏者として活躍し、80年代、90年代にはモデル、俳優としても活躍した人。
ジャズに詳しくないのでわかりませんが、自らの音楽を「フェイク・ジャズ」と呼んでいて、80年代から、かの有名なバスキアなどと絵を描いていたらしい。
90年代後半には、難病を患って音楽活動と俳優としての活動を休止しています。
近年、80年代から描いていた作品を含めて個展を開催し始めます。

作品は、皮肉っぽくユーモアに富んでいる、という印象です。
作品のタイトルも長く、個性的なものが多いです。
たとえば、

『男の手がフォークになってしまった。彼を信じるな。』
『親愛なる神様へ、私はあなたに直接質問をしました。たった一度でいいので、お答えください。真心をこめて。ヴァーンより』

などが挙げられます。

色調は暗く、それが退廃的な雰囲気をかもし出しています。
モティーフは鳥やウサギなど動物が多かったように思えます。
なんとなく、世界を斜めにのぞき、人嫌い、の印象をうけます。
だからこそ、かも知れません。描かれる世界には、独自の世界観があります。

私が見せられたのは、タイトルが長い作品として上で取り上げた、『親愛なる神様へ、私はあなたに直接質問をしました。たった一度でいいので、お答えください。真心をこめて。ヴァーンより』という作品です。
暗めの作品が多いなか、画面全体が彩度の高い、青と緑が画面の全体を占めている作品です。
草原たたずむ男が大きな青空を見上げている、という場面としては、単純な作品です。
しかし、暗い調子の作品が数多く飾られる空間のなかでは、その単純で明るい作品が異彩を放ちます。
そして、「ヴァーンはちゃんと答えを得られたのか、おそらく得られなかったんじゃないかな」という不思議な失望感をおぼえるのです。

明るいながらどこか不安と失望を感じさせる。
皮肉で、不安が支配する、退廃的な世界。
ジョン・ルーリーの作品は、逃れられない暗さをもっている、と感じました。

<文字と絵画の融合>
国立新美術館で目を奪われたのは、福田尚代というアーティストの作品です。
読書好き、そして美術好きの私としては、その2つの好きなものが融合した作品に魅せられてしまいました。

手紙や名刺に刺繍を施した作品。
既存の文章をつかいながら、新たな物語を生み出す作品。
文字によって描かれる淡い色のグラデーションの作品。
消しゴムを素材にした作品。

絵画、彫刻という芸術作品において、文字、文章は、末席に追いやられる傾向にあります。
というのは、文字や文章は説明的だからです。
文字が作品のなかに登場し、作品の世界観や価値を説明してしまうと、鑑賞者は興ざめです。
お笑い芸人が、自分のネタが何故面白いか、をネタをやらずに説明するようなものです。

もちろん、その作品を創作したアーティストの人となりや価値観は、作品の魅力や価値を知ることの重要な手がかりです。
だからこそ、キャプションやカタログなどでは、アーティストの人となりや活動の歴史を説明します。
また、作品そのものの魅了を説明します。

特に、絵画や彫刻ともなると、文字や文章は作品の外に置かれたり、作品の中に登場するとその意味を奪われたりします。

しかし、福田尚代の作品は、文字が主役です。
文字には意味があり、それらが作品を魅力と価値の一翼をになっています。
文字や文章は単なる記号ではなく、見せるものであり、その意味を解釈する対象として作品に登場します。

『不忍 蜘蛛の糸』という作品は、遠めで観るとアクリルの絵の具で描かれた、美しいグラデーションの抽象画です。
しかし、近づいてみてゆくとそれが線や点で描かれていないことに気づきます。
小さく書かれた「蓮」の連続が絵画のグラデーションを生み出しているのです。
描かれた絵画は抽象的なグラデーションでしかありません。
しかし、それらが「蓮」という極楽浄土を象徴する文字で描かれていることがわかると、その作品の意味が理解することができるようになるのです。

説明的でなく、しかし意味のすべてを取り除かれてもいない、絵画のなかの文字。
微妙な均衡によって支えられるその存在は、繊細でやわらかい作品をつむぎだしています。

<パスポート制っておもしろい>
最後にワタリウム美術館のジョン・ルーリー展で、はじめての経験をしました。
それは、パスポート制のチケットです。
名前を書いておけば、会期中なんどでもその展覧会を鑑賞できる、というものです。

家の近所にある美術館ではないので、そう何度も足を運べる、というわけではないですし、実際、近くにあっても何度も足を運ぶことはないかもしれません。
しかしながら、チケットを財布に入れておいたら、ちょっと時間があったときに足を運んでみよう、と思うかもしれません。
そうすれば、足を運んだついでに、美術館のミュージアム・ショップで買い物をするかもしれません。
また、カフェで食事を取るかもしれません。

1回以降はタダ、という有効なマーケティングを実践している美術館、という意味でもワタリウム美術館はおもしろい存在です。

【会場情報】
◆ワタリウム美術館-「ジョン・ルーリードローイング」展
http://www.watarium.co.jp/exhibition/index.html
◆TAB-「YOU ARE HERE」
http://www.tokyoartbeat.com/event/2010/A740

◆国立新美術館-「アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち」展
http://www.nact.jp/exhibition_special/2009/03/af2010.html
◆TAB-「アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち」展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/E961

【作家情報】
◆ジョン・ルーリー(John Lurie)
・strange&beautiful music
http://www.johnlurieart.com/art/

◆福田尚代(Naoyo Fukuda)
・福田尚代の回文と美術
http://naoyon.web.fc2.com/

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