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プロジェクトへの途中参加心得~消極編?~

4月 3, 2010

最近、1ヶ月だけですが進行中のプロジェクトに参加しました。
入社して以来、1つのプロジェクトに関わり続けてきたので、とても新鮮な体験でした。

正直、嫌な思いもしたプロジェクトでしたが、その分、学びが多いプロジェクトでした。
その学びのなかでも、進行中のプロジェクトに途中参加する際の心得について以下にまとめようと思います。

プロジェクトに配属されると、たいていの人は以下のような点を気にします。

開発に使うプログラム言語は?
IDEなど開発ツールはなに?
PCのメモリやCPUなどのハードウェアの性能は高い?

こうした点をプロジェクトにアサインされる時点で気にする気持ちはわかります。
自らのキャリアや労働環境に直結するものだからです。
これらは、仕事の楽しさにつながるものでもあります。

しかし、進行中のプロジェクトに途中参加するときに、まず観察し、理解しなければならないのは、人です。

人を理解するとは、

人と人、人間関係を理解する
本当に組織の中で身を削っている人、ブタを探す
自分の立場、チキンであることを理解する

と言うことを意味します。

特に重要なのは、プロジェクトにおけるブタを見極めることです。

<人間関係を理解する>
プロジェクトは、さまざまな人々で構成されています。
そして、社会人である以上、プロジェクトに関わる人たちは皆、大人です。
しかし、心の底はわかりません。

あいつは気に食わない
あの人にはさらえない

などという気持ちを多少なりとも隠して仕事をしています。
少々、腹黒いかもしれませんが、プロジェクトに関わるときはこうした点をまず見極める必要があります。
というのは、こうした人間関係が、プロジェクトに関わる人たちのプレッシャーになるからです。
そして、そのプレッシャーこそが人を動かし、ひいてはプロジェクトを動かすからです。
とくにプロジェクトを動かす力をもつ人が、誰から、どのようなプレッシャーを受けるか、という点は重要です。

また、プロジェクトにかかわる人たちの役職は重要です。
部長や課長、主任と呼ばれる人たちは、プロジェクトにおける実際の役割や立場、仕事内容は別にしても、組織やプロジェクトに影響力をもちます。
直にプロジェクトの進行に影響を与えることはできなくても、プロジェクトの外側、会社という組織には影響を与えられます。

プロジェクトにどのような人間をアサインするか
プロジェクトにどれだけの予算をつぎ込むか
そもそもプロジェクト自体を続けるか

こうしたことの決定の多くは、プロジェクトの外、会社という単位で行われます。
そのため、会社の役職がものをいうのです。
ですので、役職つきの人が、実際はプロジェクトに深く関わっていないように見えても、組織図としてアサインされているなら無視してはいけません。

プロジェクトにおける人間関係は、想像以上に開発作業に影響を与えます。
この点を無視せずに、注意深く観察しましょう。

<ブタを助ける>
しかし、もっと重要なことがあります。
それは、そのプロジェクトにおいて、Scrumでいう「ブタ」を見極めることです。
「ブタ」とは、献身的に働き、実際に身を削っている人のことです。
ですから、この「ブタ」という言葉は悪口ではありません。

なぜ、ブタを探す必要があるか、といえば、そのブタの能力、やる気、スキルがプロジェクトの上限を決めるからです。
また、切羽詰っているプロジェクトにおいては、さらにブタこそがプロジェクトの防波堤であり、被害者にもなりえるからです。
切羽詰ったプロジェクトでは、組織の偉い人が、

もっと品質を上げろ
もっと早く作れ
もっとコストを下げろ

と命令しても効果はありません。
なぜなら、時間、品質、コストはトレードオフの関係にあるうえ、切羽詰ったプロジェクトでは、それらのトレードオフがきかないからです。

スケジュールを延ばすかわりに品質を磨きをかける
搭載する機能をへらしてスケジュールを間に合わせる
スケジュールも機能も譲れないから十分な要員を確保する

こうしたトレードオフができない場合、プロジェクトに関わっている人のスキル、モティベーションのみがプロジェクトの進行と質を左右することになります。
プロジェクトの内側をモノを作る開発やテストだとすれば、もともと、プロジェクトの外側にいる人たちは、資金や人、スケジュールなどのいわゆる「調整」という、外側でもできることが無ければ、プロジェクトの進行や質に影響及ぼすことはできないのです。

1点できることがあるとすれば、上記のような無理を「命令」として、プロジェクトの内側にいる人たち無理強いすることです。
が、それでは開発に携わる人たちのやる気を殺ぐだけ。よい影響を与えることはできません。

プロジェクトの外側でできることがない状態では、役職がそれほどものを言わなくなります。
実際にプロジェクトを活性化させる手はないからです。

そのため、プロジェクトのアウトプットの質、進行の速度は、プロジェクトの内側で仕事ができる人々に規定されることになるのです。
そして、プロジェクトにおいて本当に身を削っている人、すなわち、ブタがプロジェクトを制御することになります。
なぜなら、大抵のブタは、その献身さと勤勉さによって周囲の人たちに、大きな影響力を持っているからです。

ただし、いくらブタであっても、プロジェクト自体を劇的に好転させる力はありません。
むしろ、ブタは、大きなプレッシャーを受け流し、多くの作業こなし続けることで、切羽詰まっているプロジェクトの進行をぎりぎりで支えているのです。
ですので、このブタを助けなければいけません。

もしも、ブタをプロジェクトの途中で失うことになれば、再びプロジェクトを制御することができるブタが出現するのを待たなければいけません。
制御を取り戻すまでのプロジェクトの状態は、ちょっと想像したくないですね。

ちなみにブタは、1人とは限りません。
どのプロジェクトにも、プロジェクトを良くしようと考えて、献身的に働く人たちはいます。
むしろ、多くの人たちがブタなのです。

ですが、切羽詰ったプロジェクトに途中からアサインされると、環境の苛酷さからそうした点を忘れがちになります。
どうしても、自分の不遇を嘆いたり、プロジェクトの環境に文句を言いたくなります。
しかし、その中で一緒に働くことになる人たちは、必死で身を削っています。

切羽詰っているプロジェクトでは、こうした人たち、ブタを助けなければいけません。
ブタを助けることがプロジェクトの状況悪化を防ぎます。
自分勝手なことを言えば、自分の身を守ることにもつながります。
なによりも、こうした人たちを助けよう、そう思うことが自分のやる気につながります。

切羽詰ったプロジェクトでは、何かとモチベーションも下がりがちです。
ですので、ブタを助けるために、と思い、自分のモチベーションを上げることは、重要なことだと思います。

<チキンであると自覚する>
むしろ、一番最初にやるべきはここかもしれません。

まずは、自分が、Scrumでいうところのチキンであることを自覚しましょう。
チキンとは、上記で外側と表現した立場のことをいいます。
プロジェクトの外側にいて、実質、プロジェクトをコントロールできない立場です。
もしも、あなたがプロジェクトを劇的に改善できる知恵と勇気、そしてやる気をもっていても、プロジェクトに途中参加するならば、参加時点ではあなたはチキンです。
開発作業という、ミッションクリティカルな部分に携わりながら、理不尽なようですが、きわめて重要な事実です。

途中で参加するプロジェクトには、すでにプロジェクトの流れや雰囲気が出来上がっています。
たとえば、

上述したプロジェクトにおける人間関係
プログラムのバージョン管理など開発環境とそのルール
プロジェクトにおける方言など、暗黙的に共有されているルール

などです。
これらは、言い換えれば、プロジェクトのコンテキストです。
プロジェクトに途中参加した人間は、こうしたプロジェクトのコンテキストを理解していません。
ですから、途中参加した人間は、外側の人間、チキンなのです。

もちろん、プロジェクトに携わるうちに内側の人間、身を削るブタになってゆきます。
そして、それはできる限り早いうちにブタになるべきでしょう。
厳密に言うと、ブタに「仲間だ」と認められるべきでしょう。

とくにブタになるという段階を経ないで、プロジェクトを自分の常識だけ判断することは危険です。
多少の経験があると、プロジェクト自体を自分の常識で判断しがちです。
そして、自分の常識と会わない部分を、大抵は「欠点」として見えるからです。
すなわち、

システム設計書を自分で書くなんてばかげてる
プログラム構造がおかしい
この便利なツールを使わないなんて時間のムダ

と言う視点です。
これらは総じて正しいのかもしれません。
しかし、自分がチキンである以上、こうした点を指摘したり、あからさまに態度に示したりすべきではありません。
なぜなら、

チキンが発言すると、ブタに嫌われるから

です。
確かに自分の意見が正しく、プロジェクトを少しでも良くしたい、という思いがあるかもしれません。
が、新たに加わった人間に、自分がやっていることの欠点をあからさまに指摘されるのは、気分が良くありません。
特にその指摘が、ブタ自身が不満を持っている点であればなおさらです。
多くの人々と一緒に働くプロジェクトにおいて、嫌われる、というのは最悪です。
仕事も楽しくなくなりますし、プロジェクトにおける自分の価値がどんどん低下してゆくからです。
そうすると、いくら自分が強い思いをもって発言してもその言葉は、ブタにとって価値がないものになるのです。

プロジェクトを良くしたい、積極的に関わりたい、と思う気持ちが強いのであれば、まず一番最初はその気持ちをグッとこらえて、チキンであることを自覚しましょう。
そして、プロジェクトのブタたちに、「仲間だ」と認められる努力をしましょう。
「ブタだ」と認められたあと、プロジェクトに積極的にかかわり、プロジェクトを改善するための発言と行動をしましょう。

以上が、今回のプロジェクトへ途中参加した経験に基づいた、プロジェクトへの途中参加の心得です。
いかかでしょう?
新年度を向かえ、新たな組織、プロジェクトに関わる方も多いと思いますので、そのような方々に少しでもお役に立てたら幸いです。

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