システム開発はもっとデザイン的要素が必要だと考えた

先日、「世界を変えるデザイン」展のカンファレンスに参加して、お話を聞いてきました。

1つは「エマージング・マーケットにおけるデザインの可能性」というタイトルの、Jan Carel Diehlさんのお話。
http://exhibition.bop-design.com/event/conference_5/
もう1つは、「デザイナーができること ~DESIGN CAN CHANGE THE WORLD~」というタイトルの、Ilona de Jonghさんのお話です。
http://exhibition.bop-design.com/event/conference_4/

彼らは、BOPビジネスに関わるデザイナーです。
BOPとは、Bottom Of the Pyramidの略で、発展途上国にいる低所得者層を意味します。
BOPビジネスは、そうした発展途上国に住まう貧困地域の人々の支援を行いながら、新たなビジネスマーケットを開拓することを目的とした取り組みです。

彼女たちが、デザイナーという立場で仕事をしています。
が、その話のなかで繰り返し使われていた言葉、すなわち重要視されていた要素は、システム開発にも関連が深いと感じられるものでした。
いかにまとめてみようと思います。

<オープンマインド>
JanさんもIlonaさんも「オープンマインド」という考え方を非常に重視していました。
彼女たちは、BOPビジネスに携わる立場から、貧困地域の生活の問題をデザインによって解決しようとしています。
しかし、すばらしいデザインは、天才的なひらめき、インスピレーションにのみによっては生まれません。
むしろ、プロダクトの受け手をよく調査することこそが、ひらめき、インスピレーションの源になります。
BOPビジネスに携わる彼らの調査対象は、貧困地域とその地域に住まう人々、ということになります。
そして、この調査において重要なことは、オープンマインド、であることなのです。

異なる文化、慣習を持つ地域、そしてその地域にすまう人々との交流は、いろいろな摩擦を生みがちです。
善悪の基準が異なることもあれば、美醜の感覚が異なれば、「良い」もの、「良い」デザインというものも変わってくるでしょう。
また、使用する言葉が違えば、自分が思っていることも、相手がおもっていることも正しく通じ合うことが難しくなります。
こうした状況下で、相手を否定したり、拒絶したりすることはとても簡単です。
しかし、そうして相手の意見や考えを無視してしまえば、綿密な調査は望むべくもありません。
むしろ、それらを尊重し、積極的に学ぶ必要があるのです。

オープンマインドとは、未知の文化や考えを積極的に受け入れる広い心、そして、積極的に学ぶという謙虚さを意味しているのです。
現地での調査を重視するという、現場主義においては、このオープンマインドが基礎であり、重要な要素になると考えられているのです。

<サスティナブル(継続性)>
貧困地域と関わるビジネスは、継続性が鍵です。
たとえば、収入で考えてみましょう。
100万円というお金を1度に寄付するよりも、1万円を10ヶ月間かけて寄付したほうが、地域は安定するでしょう。
というのは、不定期に大きな収入を得るより、小額でも定期的な収入を得られたほうが、人々は生活の計画が立てやすく、金銭を貯金や投資などがしやすくなるからです。
生活の予想ができる、計画が立てられる、というのは、安心の源です。

BOPという観点からは、地域の安定というのは無視できない重要な要素です。
とりあえず、ある地域にかかわったものの、うまくいかなからといってすぐに撤退してしまうと、そのコミュニティを破壊しかねません。
一時は斬新なアイデアでうまくいっていたため、ビジネスの競合となった地元企業をつぶしてしまったものの、ビジネスとしては赤字になったため撤退する。
このことによって、地元で同様のサービスを提供できる企業がなくなり、その地域の人々はサービス自体を受けられなくなる、という事態がおこりかねません。

このような事態を防ぐためには、そもそも地元企業と競合するようなサービスをもってBOPとして提供しない、という配慮が必要でしょう。
しかし、図らずも地元企業と競合し、その企業が消滅してしまったのであれば、そのサービスを継続的に提供し続ける、という義務が生じます。

また、低コストのビジネスである、ということも重要です。
BOPという性格上、そのビジネスがどれだけ大成功しても、大もうけは期待できません。
また、そもそもビジネスが成功するか、が未知数です。
そのうえ、ビジネスは継続することを念頭におく必要もあるのです。

ですので、コスト、必要とされる経費は可能な限り低く抑え続ける必要があります。
お話の中では、初期の費用よりも、それを維持するためのコストを低く抑えることの重要性が取り上げられていました。

なにごともはじめる事は、それほど難しいことではありません。
とくにBOPのように、貧困地域という弱者に先進国の資本という強者が関わるのですから、そのハードルは相当低い、と言えます。
しかし、一度、サービスを提供したら、そのサービスの質を保ち、消費者が必要な限りサービスを提供し続ける義務があります。
これは、先進国のビジネスでも当然のように求められることです。
BOPビジネスにおいては、その地域と人々の生活を安定させるためにも、より強く継続性は求められているのです。

<すでにあるモノを利用する>
ある参加者の方が「デザインを盗まれたらどうしますか?」という質問にIlonaさんが以下のように答えました。
「それは誇りに思うべきことだ。知恵やソリューションは共有されるべきものだから。」

もちろん、「事前に連絡して欲しい」という主旨のこともおっしゃっていたので、「盗用を認めた」わけではないでしょう。
しかし、自らのアイデアを利用されることについて、金銭的な見返りをもとめていません。
むしろ、多くの場所で自分のアイデアが利用され、問題が解決されること、そして、自らのアイデアがさまざまな場面で利用され、さらに磨き上げられることを望んでいます。

この考え方は、ITの世界ではすでに一般的であるといえます。
すなわち、Linuxなどが代表するオープンソースがこの考え方に近いと思います。
また、オブジェクト指向が目指すプログラムの再利用、そして、Javaが理想とするWrite Once, Run Anywhereという思想もきわめて近いです。

デザインもコードも、それを生み出す人々のインスピレーションを源泉としている、と考えられます。
そのため、自らの生み出したものが唯一無二だと考え、そのオリジンを主張したくなります。
そして、それらを守るために自らが生み出したものを他者に利用されることを拒みたくなります。

もしくは、自らの力量と自尊心を守るため、すでに他者が生み出した素晴らしいものがあるのに、それを使用することを拒む、ということもあります。
とかく、デザインには、一般的にデザイナーという個人の才能や霊感によって生み出される、というイメージがあります。
また、デザイナー自身も、みずからの手で新たなプロダクトを生み出したい、という欲もあるでしょう。
そのため、「何でも自分で作り出す」という意識をもちがちです。
しかし、その気持ちを抑えて、利用できそうなものは、有効に利用すべきなのです。

すでにあるモノを自らでイチから生み出す必要はないのです。
むしろ、利用すべきなのです。
すでにあるモノに自らのアイデアをつけたしたり、すであるモノ同士を結びつけたり、すでにあるモノの欠点を解消したりすることも視野に入れてデザインすべきなのです。

<デザインとは目的を達成するためのより良いプロセスをつくること>
現代において、デザイン、という言葉は多くの領域にまたがって使用されています。
単に魅力的、奇抜なカタチを生み出すことを目的としませんし、またなにか物をつくり出すことを目的としません。

では、デザインとは何なのでしょうか?
私がお二人の話を聞いて思ったのは、
デザインとは、

目的を達成するためのより良いプロセスをつくること

なのだ、ということです。
美しいカタチのプロダクトデザインも、BOPビジネスにおける地域への取り組みも、目的が存在します。
たとえば、美しいオーブントースターはパンをトーストにすることを目的としています。
また、JanさんのPeePooは、地域の衛生状態の改善を目的としています。
しかし、その目的を達成するためには、トースターやPeePooが不可欠なのではありません。

目的にいたる方法いくつもあります。
トーストはフライパンで焼いてもいいわけですし、衛生状態を解決するには下水を整備し各家庭にトイレを設置しても良いのです。
ただ、それらの方法はデザイナーにとっても、そのプロダクトを受け取る人々にとっても最適なプロセスではなかったのです。
パンを焼く人は、焼いた後わざわざフライパンを洗いたくもなければ、硬質で面白みのない形のトースターでパンを焼いても良い気持ちになれないのです。
また、PeePooを使う人々は、下水を引いて個別の家にトイレを作るお金もなければ、時間もありませんし、解決したい問題が他にも山ほどあるのです。

ですから、デザイナーは、プロダクトの受け手、もしくはデザイナーが届けたいと思っている対象を調査し、最適なプロセスを提示するのです。
そして、提示する方法がモノのカタチを決めることであったり、ものごとのプロセスを決めることであったりするのです。

デザイナーの仕事であるデザインとは、目的を達成することだけでなく、目的に到達するためのプロセスをより良くつくりあげることなのです。
このように考えると、デザインとシステム開発、それも受託システム開発の目的は非常に似ているといえます。
ビジネスアプリケーションもまた、アプリケーションを使う人々の業務プロセスをより良くすることを目的としているからです。
受託システム開発においては、まだ「デザイン」が強く意識されているとはいいがたいです。
ですが、「デザイナー」の思考方法やプロダクトを生み出す過程から学習することがたくさんあるはずです。

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