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「山本冬彦コレクション」展でコレクションがちょっとしたくなる

1月 23, 2010

<小さな会場に大量の作品>
2010/1/16(土)に千駄ヶ谷の佐藤美術館で開催されている「山本冬彦コレクション」展へ行きました。
この展覧会は、前の記事で紹介した『週末はギャラリーめぐり』の著者であり、美術品のコレクターでもあります。
サラリーマンながら蒐集したコレクションは、1300点を超えるというすごい方です。
現在はアートソムリエを自認し、アートの楽しみ方を普及させようと尽力されています。

この展覧会は、まさに趣味を極めたといってよい、山本冬彦さんの1300点を超えるコレクションの中からえりすぐられた161点の作品を鑑賞することができます。
3階に紹介や支援を目的として購入した若手の作家の作品、4階は、山本冬彦さんが好きで集めた同世代の作家の作品、5階には大作がそれぞれ展示されています。

私が佐藤美術館に足を運んだ日は、山本冬彦さんのトークショーが運よく開催されており、トークショーの際には、会場となった3階のフロアは人で一杯になっていました。
ちなみに学生は300円、一般でも500円、と鑑賞料が通常の展覧会くらべて1/3程度になっています。
161点もの大量の作品を鑑賞することできる、ということで、大変、お得な展覧会です。

<見ごたえある大量の現代アート作品>
私が特に気に入ったのは、3階のフロアです。
そこには、山本冬彦さんが支援も目的として購入した現代アートの作品の数々が並べられていました。
大量の作品を展示するため、作品の一つ一つを展示する間隔がとても狭く、雑然とした雰囲気なのは否めません。
ですが、色彩もモティーフも明るい作品が多く、作品1つ1つの明るい印象と、雑然とした展示の雰囲気とがマッチしていました。
まだ枠にはまっていない、無軌道なイメージのある現代アートの性格をあらわしているかのようでした。

私が考える、現代アートのよさは、気軽に楽しめる、という点だと思います。
ルネサンスなどの絵画は、その作品が生まれた歴史などのバックボーンを理解した上で、鑑賞することが求められます。
というのは、その当時の文化や価値観を共有していないと、その作品の面白みや価値を理解できないこともあるからです。
たとえば、当時からすれば斬新な構図だったり、過激なモティーフを取り上げたりしている作品も、現代の人から見る普通のものだと受け止められることがあります。
これは、現代を生きる私たちが、その当時の文化や価値観を生で体験することができないためです。

しかし、現代アートではそのような心配はありません。
現代を生きる私たちと作品を創作する作家は、同じ時代を共有しています。
ですので、その作品を楽しむために現代の価値観を探ろう、などと構えなくてもよいのです。
それは、現在の私たちがその作品をどのように受け止めて評価するかによって、その作品の価値を決めることとなるからです。
もちろん、作品の価値を芸術の歴史の文脈に位置づけて語る人にとっては、芸術の歴史を知る必要があります。
また、勉強していないと、自分が「新しい!」と感じる手法で製作されていても、実際は伝統的な手法で製作されていた、という勘違いもあるかもしれません。
ただ、作品そのものを楽しんだり、価値をはかろうとするときは、何も専門的な知識を持つ必要はありません。
たとえ、好き/嫌いというだけのベクトルだけで判断する「素人判断」といわれるような作品の見方をしても、その作品の価値を創造するの一助になる、というのが、作品とともに生きて鑑賞している私たちの特権なのだ、私はそうのように思っています。

3階のフロアは、このような現代アートの性格や面白みを感じることができる空間であったと思います。

<アートを消費する>
トークショーも聞いてきたので、そのまとめも少し書きたいと思います。

山本冬彦さんがサラリーマンでありながら、20年間もアートを蒐集してきた動機は、単純明快に「好きだから」だそうです。
購入されてきた作品も50万円を超える高額な作品は数少なく、高くても10万円前後の作品を購入されたり、数千円の作品を購入されたりすることも多いとのことでした。
特に、蒐集を継続するために必要な時間やお金の点については、「他の人たちが、タバコの煙、お酒、車のガソリンに払った興味や金銭を、美術に集中させてきた」から、問題がなかったそうです。すごいですよね。
そして、アート蒐集を続けるなかで、作家や美術の関係者たちとの交流、そして、自分と同世代の作家が生み出した作品の価値が定まってくるプロセスを楽しんできたのだ、そうです。

私の印象に残っているのは、作品を蒐集することだけが目的ではなく、「作品をその都度、消費してきた」という言葉です。
何かを蒐集し、自分のコレクションを作り上げようとすると、そのものを収集すること自体が目的となりがちです。
そうすると、最初はそのものの素晴らしさを所有したい、と思っていたにもかかわらず、その素晴らしさを楽しむ余裕もなくなってしまいます。
そして、そのものの素晴らしさを判断する基準が、そのものの希少性だったり、価格だったりと、内面的なものではなくなってしまう。
結果、外面的な要素や評判に振り回されて、そのものを蒐集することが苦痛になったり、億劫になったりしてしまう。
美術品に限らず、牛乳のキャップやお酒の蓋、その他もろもろ、子供のときに、何かを集めたことがある人は、きっと覚えがあるのではないでしょうか。
だからこそ、何か自分が素晴らしい、と感じるものを手に入れたら、その素晴らしさをしっかりと味わいたいものです。
それこそが、「消費する」ということであり、「消費する」贅沢なのだと思います。
その消費する贅沢を知る山本冬彦さんが、現在、力を入れていることが、

アート購入することを消費の選択肢の一つすること

です。
たとえば、小旅行する、ブランド品を買う、という行為と同じようなこととして、アートを購入する、という感覚を日本の人たちに持って欲しい、とお考えです。

趣味も多様化し、興味も金銭も特定の分野に集中する、という現象はなかなか起こりにくい昨今、現代アートを中心として価格の安い作品であれば、手軽に楽しめる趣味として定着するチャンスは大きいかもしれません。
私も、山本冬彦さんのお話を聞いていたら、ほんのちょっとですが、「気に入った作品がとっても安かったら買ってみようかな」と考えてしまいました。

とはいえ、なかなか購入までは踏み切ることができませんので、現代アートに興味を持ってもらうために周囲の人を誘って美術館へ行く、という形で、山本冬彦さんの目標の手助けをしたいと思います。

<マイアートは、高松和樹の『How to make/作り方』>
影絵を思わせる作品。
モノトーンの小さな作品で、自分の寝ているロフトの壁にかけてみたい、と思わされました。
もっと他の作品も生で鑑賞したい、と思っています。

【会場情報】
◆佐藤美術館-山本冬彦コレクション展
http://homepage3.nifty.com/sato-museum/exhibition/index.html
◆芸力-山本冬彦コレクション展
http://geiriki.com/ten/detail.cgi?id=10021349

【作家情報】
◆高松和樹(Kazuki Takamatsu)
・距離感主義
http://kazukitakamatsu.web.fc2.com/

【次の予定】
◆「エレメント 構造デザイナー セシル・バルモンドの世界」展 @東京オペラシティ
http://www.operacity.jp/ag/exh114/
◆TAB-「エレメント 構造デザイナー セシル・バルモンドの世界」展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/3B6D

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『週末はギャラリーめぐり』をしたくなる

12月 13, 2009

かなり前に「読みます!」宣言をした、『週末はギャラリーめぐり』という本を読みました。
久々に自分の興味と本の内容が一致する、という気持ちの良い読書体験ができました。
著者の山本冬彦さんは、アートソムリエを自認し、30年間で1300点もの芸術作品を収集されたという方です。
山本さんの蒐集のきっかけは、マンションを購入した際に壁に飾る絵を探したこと、というのですから、まさに趣味を極めた方です。

そんな著者の手がけた本書は、まさにアート初心者、必読の書です。
現代アートの美術館の紹介から始まり、美術品の種類の説明、都内にある主要な画廊の紹介、画廊やギャラリーでのマナー、美術品蒐集の始め方までと、アート初心者が知りたいことを的確に捉えた内容になっています。

たとえば、初心者にありがちな以下の疑問にも本書では答えてくれています。
・美術品の保存って難しいのでは?
→ きちんと額に入れ、日光や冷暖房の風をダイレクトに当てなければ神経質にならなくても良い。

・サイン帳(芳名帳)ってなに?
→ 個展を開催した作家にとって、どれだけの人が個展に来てくれたか、という記録になる。
また、住所を書くと画廊が開催するショーの知らせを送るのにも使用する。

・最初にどんな作品を買ったらよい?
→ 無名で若手作家の本物の作品を購入する。もちろん、自分の目と頭で価値判断を下して買うこと。

特に私に強い印象を残したのは、著者のコレクションにたいする考えをあらわした以下の文章です。

お金に任せて集めたコレクションの中には、世間で有名な作家の作品ばかりをすすめられるままに集めたもので、そこには集めた人の独自の眼がまったく感じられない、つまらないものが時々見受けられます。
コレクションを雑誌にたとえると、どんなに有名な人気作家を執筆陣に集めて文章を書いてもらっても、その雑誌のテーマやコンセプトが明確で独自性がなければ立派な雑誌はできません。
コレクターとは雑誌の編集者であり、コレクションとはまさに編集という創造活動なのです。 (p.139)

コレクションを創造活動である、とする著者の考え方には共感をおぼえます。
私の場合は、アートではありませんが、読書が趣味なのでよく本を購入し読みます。
社会人になってからは、ビジネス書を中心に読んでいるので、最近まではビジネス書が本棚の大半を占めていました。
しかし、現代アートに興味をもつになってからは、アート関連の本を購入して読む機会が増え、徐々に本棚を侵食してきました。
そのような本棚を眺めていると、自分の思考や嗜好の変化、そして、現在の自分の頭の中を取り出して眺めているような気分になります。
そして、その本棚が自分のひとつの作品に思えてくるのです。
こうした点が、著者のコレクションにたいする思いに共感をおぼえる点です。もちろん、お金のかかり方は天と地ほどの差がありますが。。。

また、こうしたコレクションのたいする思いを見ると、「じぶんも集めてみたい」という思いが強くなってきます。
今年の5月に現代アートと面白みに気づくまで、「アートを買おう」ということなど微塵も考えたことがありませんでした。
それは、触れてきたアートがルネサンスやバロックなどの売り買いどころか、売買すらされないような価値をもった作品を中心に美術館で鑑賞してきたからです。
そして、現代アートに興味をもって「作品が買える」という、当たり前の事実に衝撃を受けてなお、作品を購入するまでにはいたりませんでした。
しかし、著者の言葉を見ると、購入する、集める、という行為そのものが自分自身を表現する1つの手段であると気づかされました。
絵を描くこと、彫刻を削りだすこと、映像を切りとり表現することをあきらめてしまった私にも、芸術にかかわりながら表現する手段がある、このように考えると俄然、「コレクションをはじめたい」と思わされるのです。

とはいえ、はっきりいってお金はありません。
ですので、現代アートを見る際には、買わないまでも「買うか、買わないかの視点で作品をみる」ことを実践したいと思います。

「自分だったらこの作品を買うだろうか」
「この作品だったら買ってもよいとおもうけど、なぜ買いたいと思ったのだろう」

こうしたこと考えながらアートを眺めることで、自分のアートにたいする考え方や趣味・嗜好が見えてくるはずです。
特に何も考えず、偶然にまかせて「いいな!」と思える作品に出会える、というのも素敵な経験だと思います。
しかし、それだけで放っておいてしまうと、出会いだけで終わってしまいます。
素敵な作品に出会ったら、出会いだけで終わらせてしまうのはもったいない。
作品の魅力と自分の趣味・嗜好のどこがあっていたのか、を考えると、その作品とより深い付き合いができそうです。
また、自分の好きな作風の作品たちに出会う機会も増えそうです。

「鑑賞するだけのアート」から「購入を考えるアート」へ、ちょっと進んでみたいと思います。

最後になりますが、著者の山本冬彦さんのコレクションが、なんと!東京で見られるチャンスがあります。
場所は千駄ヶ谷駅ちかくの佐藤美術館で、1月14日(木)より開催、とのことです。
アートソムリエのコレクションに興味がある方は、是非、足を運んでみてください。

【作家情報】
◆山本冬彦(Huyuhiko Yamamoto)
・アートソムリエ・山本冬彦
・山本冬彦, 『週末はギャラリーめぐり』, ちくま新書, 2009年
【展覧会情報】
・佐藤美術館-Exhibition_「山本冬彦コレクション」展
・芸力-検索結果_「山本冬彦コレクション」展