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ハラミュージアム アークは過去と現在が出会う場所

11月 1, 2009

<遠い渋川>
2009/10/28(水)には、美術館・展覧会めぐりの旅の3日目として、群馬県の渋川にあるハラミュージアムアークへ行きました。
今回の美術館・展覧会めぐりの旅のメインともいってよい遠くまでのお出かけ、となりました。

ハラミュージアムアークは、品川にあります現代アートの収蔵品が多いことで有名な原美術館の別館です。
今年、原美術館を訪れた際に、群馬県に別館があることを知って、是非、行ってみたいと思っていました。
しかし、渋川は遠い、です。
私は赤羽駅から高崎線で高崎駅へ、そこから電車を上越線に乗り換えて渋川を目指しました。
その間だけでも1時間半はかかったのではないでしょうか。
上越線の渋川駅につくと今度はそこから、さらにバスを利用します。
3番のバス停でバスに乗り、「グリーン牧場前」で下車します。
ちなみに、このバス停から出るバスは、到着地点が2つあります。しかし、「グリーン牧場前」はどちらのルートでも停車するので気にする必要はありません。
そして、グリーン牧場を右手に、かすかに漂う牛糞のにおいを感じながらさらに数百メートル歩くと、そこにハラミュージアムアークはありました。

めちゃくちゃ遠いです。
美術好きの人ならば、2時間程度の遠出ならば苦にならないかもしれません。
が、どうせなので伊香保温泉まで足を伸ばして、温泉にゆっくりつかって骨休めをしたほうがよいと思います。
私は日帰りでしたが、次回、行く機会があればしっかりと温泉宿を予約してゆくと思います。

<入り口前のオブジェになぜか照れる>
チケットは、美術館の土地の入り口、まるでパーキングチケットを売るかのような形で購入します。
まず初めに目に入ってくるのは、赤い大きなビーズが数珠つながりになっているオブジェです。
建物の入り口で、暖かな日の光を浴び輝き、螺旋のようにうねって空へ伸びています。
そのオブジェを通り過ぎ、建物に向かって歩き出して、ふとそのオブジェを振り返ってみると、そこにはハートの光り輝くオブジェが出現しました。
実は、このオブジェは横から見ると単に空へと伸びているだけなのですが、真正面からみるとそれは綺麗なハート型をしているのです。
感心してオブジェを眺めていたのですが、なんとなくそのハートを眺めるのが気恥ずかしくなったので、早々にまずは「原美術館コレクション」展の会場へ向かいました。
ちなみにこの作品は、フランス人のジャン=ミシェル オトニエルの手によるものです。

<日本の現代美術はおもしろい、に同意!>
「原美術館コレクション」展の副題は「日本の現代美術はおもしろい」というものですが、まさにそのとおりでした。
全体的に、展示されている作品点数が少ないと感じられましたが、おもしろい作品が多数展示されていました。
特に以下の作家の作品が印象に残りました。

◆やなぎみわ
シニカルで、遊び心あふれる作品でした。
ヘンゼルとグレーテル、マッチ売りの少女など、有名な童話をベースにした写真。
しわしわの老人の指をかじる空ろな目をしたグレーテル、ニコニコと笑いながらマッチのともし火を見つめる年老いてしまった少女。
現在では、子供向けの童話の世界で可愛らしくデフォルメされてしまった世界。
その真の姿、裏の姿を映し出そうとしているかのような作品でした。
意地悪な目線から童話を捕らえた作品だなぁ、と思いながらも、作品には静かなら迫力が感じられ、長い時間、見入ってしまいました。

◆李禹煥(リー・ウーファン)
テンポが良く、絶妙な間をとった色の配置。
さらに、群青に近い、不思議で綺麗な青色。
美しい青色で描かれた点と線は、他の飾りをいっさい必要とせずに、それだけで鑑賞者の目をひきつける魅力をもっています。
静かで、優雅、といった印象を受けた作品でした。

◆名和晃平
正面から捉えられない、シマウマのオブジェ。
光を拡散させてしまうプリズムシートを張ったボックスの中に、シマウマのオブジェが閉じ込められています。
そのため、正面からシマウマの像を捉えようとしてもできません。
ボックスの上や少し横にズレた位置からしか、その像を捉えられず、その姿を追い続けているとボックスの周囲をクルクルと回ってしまいます。
とても遊び心のあふれる面白い、作品でした。

<觀海庵では岸駒に圧倒される>
ハラミュージアムアークでは、同時にもうひとつ「季をめでる」展が開催されていました。
「原美術館コレクション」展が現代美術に焦点を当てたものであれば、「季をめでる」展は歴史ある近代の作品をならべた展覧会になっていました。
「原美術館コレクション」展と「季をめでる」展をあわせて、日本の今昔の美術を楽しむ、という趣向のようです。
近代美術ですので、狩野派のような作品もあれば、現在も活躍する写真家の杉本博司の作品も展示されていました。

私がその中でも目を奪われたのは、岸駒(がんく、またはきしこま)の『猛虎図』です。
「季をめでる」展の宣伝にも使われている作品ですが、その写真を見ただけではわからない迫力がある作品です。
觀海庵(かんかいあん)は全体的に照明を落としていて、薄暗くなっています。
その空間に静かな光を浴びて浮かびあがる虎は、勇壮さと不気味な恐ろしさがありました。

昔の作品は作品を保護するためにあまり照明が当てられず、その結果、実物を見ると「写真で見たほうが良く感じられて、がっかり」ということがあります。
が、この岸駒の『猛虎図』は実物を是非、見ていただき、その迫力を味わっていただきたい、と思います。

余談ですが、岸駒のことを調べていたら、岸駒の虎、という落語があることを知りました。
そのなかで岸駒は、絵の腕前を鼻にかけた嫌なやつ、として描かれているようです。
これほどの腕前をもっているなら威張り散らすのも仕方のないことかもしれません。

<ハラミュージアム アークだけ目当てはキツイかも>
「原美術館コレクション」展と「季をめでる」展、その両方の展示内容には満足ができました。
良い天気にも恵まれ、まさにお出かけ日和でもあり、よい旅行になったと思います。
が、上でも書いたとおり渋川は遠いです。
展覧会の内容もよかったのですが、会場まで足を運ぶ苦労に比べると、と展示の数が少ないように感じてしました。そのため、「ここまで来てこれしか見れないのか」と若干、不満を感じてしまいました。

これは展示内容というよりも、私が楽しみ方を間違えたためだと思います。
この美術館には鑑賞だけを目当てに訪れずに、近くにある温泉を一緒に楽しんだり、併設されているグリーン牧場を楽しんだりしたほうがよいです。
別の施設を一緒に楽しんだほうがお得感もあり、足を伸ばす甲斐があると思います。

【会場情報】
◆ハラミュージアム アーク
http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html
◆TAB-「日本の現代美術はおもしろい」展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/4B03
◆TAB-「季をめぐる」展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/D19C

【作家情報】
◆やなぎみわ(Miwa Yanagi)
・Miwa Yanagi(公式ホームページ)

・exhibition:
ヴェネチア・ビエンナーレ美術展53回日本館展示「Windswept Women:老少女劇団」
http://www.yanagimiwa.net/exhibition/index.html

◆李禹煥(Lee U-Fan)
・art-index-artists_李禹煥

◆名和晃平(Kohei Nawa)
・Kohei Nawa(公式ホームページ)

◆ジャン=ミシェル オトニエル(Jean-Michel Othoniel)
・GALERIE EMMANUEL PERROTIN-ARTISTS_Jean-Michel Othoniel

◆岸駒(Ganku・Kishi Koma)
・Wikipedia_岸駒

【次の予定】
◆エマージング・ディレクターズ・アートフェア「ULTRA002」
http://www.spiral.co.jp/e_schedule/2009/10/-002.html

◆TAB-エマージング・ディレクターズ・アートフェア「ULTRA002」
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/0D3E

※記事はUPDATE済みです。
「ULTRA 002」で現代アートのダイナミズムを実感する

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