Posts Tagged ‘村上友重’

静かな時間をCASHI゜で過ごす

11月 15, 2009

2009/11/14(土)に、馬喰町にあるギャラリー、CASHIへ行きました。
目当ては、「ニエプスの箱・右」展です。
このエキシビションは、「ULTRA002」という、表参道で開催されていたエキシビションにも作品を出展した杉浦慶太、助田徹臣にくわえて、村上友重という3人のアーティストの作品が展示されるグループショーです。

じつは、「ULTRA002」の記事を書いときに、作家と作品をとりちがえて紹介する、というミスを犯しました。
その際、CASHIの松島様に間違いを訂正するのコメントをいただくと同時に、このグループショーのご紹介をいただいたので、厚顔無恥にも伺うことにしました。

CASHIは、JR馬喰町駅のC4番出口からすぐのところにありました。
私にしてはめずらしく、初めての場所でも迷わずつくことできました。
CASHIは白くて小さい(失礼かもしれませんが、)、静かな空間でした。
少々低めの温度の室内と白い壁と天井に囲まれた音のない空間は、とても神秘的でした。

私の印象にのこったのは、入り口のすぐそば展示されていた助田徹臣の作品です。
はかなげで気だるげな女性たちが被写体として収められた作品の数々は、みつめていると漠然とした不安を感じてしまいます。
写真に収められるそれぞれの場面は、現実感にあふれて否定しがたいのに、そこに登場する女性たちは、「ほんとにそこにいるのだろうか?」と思わされるような存在感。
ガラスのような繊細さをもった作品だと感じました。

また、面白いと感じたのは作品の展示の仕方です。
それは、同じ写真が別の作品に、登場する、という展示方法です。
たとえば、1枚の写真として展示されている写真が、1つの額縁に複数枚、飾られている写真群の中にも展示される、という具合です。

普通、芸術作品というのは一回性、一意性がその作品価値に結びつきやすいものです。
1つの作品は、天才的な芸術家に手により生み出され、たとえ同じ作者をもってしてもまったく同じものを製作することはできません。
ようする、芸術的な才能にめぐまれた天才の手によること、2つと同じものはないということ、という希少価値は、芸術作品の価値の源泉だともいえます。
たとえば、版画の作品は、同じ版の作品にシリアル番号を振り、1つ1つの作品を別物であることを強調して販売されます。
このように、作品の一意性、希少価値を高めることで、作品そのものの価値を高めるという方法が普通です。

助田徹臣の作品では、同じ写真を別の作品に別の展示方法で登場させています。
このことで、まったく同じ作品にべつの価値をもたせています。
単に希少価値や一回性を強調するのではなく、展示方法に同じ作品に別の意味と魅力をもたせる、という逆の手法はとても面白い、と感じました。

このほかにも、気になったのは、白い3つの額縁です。
大きな額縁が3つ並んでいたのですが、それらすべて真っ白なのです。
あれは作品だったのでしょうか?
それとも、作品が売れてしまって展示からはずされていたのでしょうか?
結構気になっています。

この「ニエプスの箱・右」展は、残念ながら14日(土)で終了してしまっています。
ですが、今度は2009/11/17(火)から、「ニエプスの箱・左」展として、同じ作家たちの作品が別の構成で展示される、というエキシビションが開催される予定です。
白く神秘的な空間で、アーティストたちの作品を楽しむために、みなさんも是非、足を運んでみてください。

<会場情報>
◆CASHI゜
http://cashi.jp/
◆TAB-「ニエプスの箱・右/左」展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/CBF3

<作家情報>
◆助田徹臣(Tetsuomi Sukeda)
・CASHI-Artist_助田徹臣

◆村上友重(Tomoe Murakami)
・CASHI-Artist_村上友重

◆杉浦慶太(Keita Sugiura)
GEISAI-MOVIE ARCHIVE_杉浦慶太さん GEISAIミュージアム #2でヴィクター・ピンチュック賞受賞

◆GALLERY_Exhibition
「ニエプスの箱・左」展

<次の予定>
◆「ヴェルナー・パントン」展 @東京オペラシティ
http://www.operacity.jp/ag/exh111/
◆TAB-ヴェルナー・パントン 展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/E961

「ULTRA 002」で現代アートのダイナミズムを実感する

10月 29, 2009

<リベンジ!SPIRAL GARDEN>

夏休みを利用した美術館・展覧会めぐりの旅、第3日目の2009/10/29(木)に足を運んだのは表参道のSPIRAL GARDENです。
ここでは、本日から「EMERGING DIRECTORS ART FAIR ULTRA002」(以下、「ULTRA002」と略します)が開催されています。

実は私、美術館・展覧会めぐりの旅の第2日目、2009/10/27(火)にこのSPIRAL GARDENに訪れておりました。

「ULTRA002」を目当てに。。。orz

当然のことならが2日もフライングをしていたため、会場は準備中。
その代わりとばかりに、MoMA Desing Storeとならんで、1階ホールのスパイラルレコーズ開催されていた「Detour」の作品の一部を鑑賞して、山種美術館へ足を運んでいたのです。

2日もフライングするほど待ち遠しかった企画ですが、足を運ぶにあたって私は少々、緊張気味でした。
というのも、普段の展覧会とは違い、美術品が直接取引される場にもなるという点に、「ちょっと勝手が違いそうだなぁ」と感じていたからです。
しかし、会場へついてみるとそれは杞憂でした。

通常の展覧会とかわらず3階スパイラルホールの入り口で、入場料の1000円を支払うとチケット兼、カタログが購入し、そのまま展示場に入ります。なんら通常の美術館と変わりはありません。

カタログを小脇に抱え、展示場へ入るとすでに来場がポツリ、ポツリと見えます。
とはいえ、基本的には人影はまばら。
私が会場に入ったのが11時半ごろと早かったためでしょうが、ほとんどがギャラリーの関係者で一般の来場者は数えるほどでした。

ちなみこの入場料ですが、どうやら3階のスパイラルホールの展示場へ入場するためにだけ必要なようです。
1階のスパイラルガーデンの展示をみる方は不必要なようです。
が、せっかくなのでカタログを購入して、すべてのギャラリーの作品を観て回ってください。

特に1階のスパイラルガーデンの展示は面白いです。
1階の展示のすぐ横はカフェになっており、カフェのお客さんの話し声、食器の触れ合う音、そして、食事の匂い。
そんな中での芸術鑑賞は、一味違って面白かったです。


<思わず買いたくなってしまう>

私は、この「ULTRA002」に足を運ぶ際には、このイベントで自分がアーティストの作品を購入する、という目的はまったくありませんでした。
また、いままで芸術作品を購入したこともありません。
結果、今回もやはり購入しなかったのですが、

「この作品はほしい!」
「安い!買いたい!」

と思わされる作品がたくさん展示されていました。
実際に価格帯で言えば、私でも購入できる作品がたくさんありました。
以下に、私が特に買いたい、と思った作品の作家さんを紹介します。

本当もっと多くの作家を紹介したいですし、1人1人の作品を細かく紹介したのです。しかし、本当に細かく書いてしまうと、文章が長すぎてよみにくくなってしまいます。このため、できる限り多くの作家を少ない文章で紹介させていただきたい、と思います。
なお、左が作家名、右がディレクター名、ディレクター名の横の括弧の中に書いてあるのがギャラリーの名前です。


◆芳木麻里絵-中山真由美(株式会社レントゲンヴェルケ)

細かで繊細なレースの作品でした。
1つ1つの飾りを見つめていると、その精緻なつくりに目が奪われ、息を呑みました。
最初は、作品はゴムのような素材を細かく掘り込んで作成されたのかな、と思っていたのですが、説明を見るとシルクスクリーンで作成されていました。
その場では、ピンとこなかったので家に帰って調べたところ、下記のURLのような製作風景が観ることができました。
相当、手間のかかる作業によって生み出されている作品のようです。

http://onefloor09.exblog.jp/11930616/

1つ1つの作品がとても手間をかけて作成されていることを知り感心するすると同時に、とても驚かされました。

◆藤井秀全-加藤育子(SPIRAL)
小さな箱がとても綺麗な光を発しているのに目を奪われました。
加えて驚かされたのは、価格です。
なんと、20000円。
私でも購入できそうな価格で、とても綺麗な作品が売られていました。

でも、今から考えると、もしかしたらゼロが1つ増えて200000円だったかもしれません。
そう考えなおさせられるほど、幻想的で温かみのある光を放つ、魅力ある作品でした。
ちなみに、作品にはなんと、

セロハンテープ

が使用されていました。
美しい作品なのに、セロハンテープ。なんとも安っぽい響き、というか。
とはいえ、それがこの作品の凄さなのかもしれません。
何気ない日常で使用されている道具が美しい作品の素材になる、という不思議さとすばらしさが実感できる作品でした。

◆笛田亜希-小暮ともこ(LOWER AKIHABARA)
おもに妖怪をモチーフにしたドローイングでした。
真っ黒の背景に、白いクレヨンで浮かび上がるように描かれる妖怪は、恐ろしさよりは儚さを感じさせます。
脆そうな、そして神秘的な妖怪たちの姿に目を奪われた作品でした。

◆窪田美樹-戸塚憲太郎(hpgrp GALLERY 東京)
はじめてギャラリーの方に話しかけていただき、作品の説明をしていただいた、ということで印象に残りました。
もちろん、雑誌のコピーを使用した作品も印象に残っています。
窪田美樹は、もともと彫刻を主として活動しているそうです。
ギャラリーの方から説明していただいた作品は、雑誌のコピーの上に絵の具の塊を落とし、削り落として作成されているものでした。
雑誌のコピーに原色の絵の具が乗せられている作品は、なんともおしゃれで、ポップな雰囲気をかもし出していました。
家の白壁に無造作に貼り付けておいたら、さぞかしカッコいいだろうなぁ、と思いました。

◆筒井美馨-タナカチエコ(新宿眼科画廊)
仏教、仏像をモチーフとした作品でした。
色合いや構図がなんともカッコよく、おもわず「かっけぇ」と口にしていました。
また、その描き込みの細かさに目を見張ります。
私のつたない筆では表現しきれないのが残念ですが、色合いや世界観、モチーフ、そのすべてがカッコよく、
すべてのギャラリーの作品の中で、

ほしい!

と思わされた作家、作品でした。

<すみません、さらに短く紹介です>

そのほかにも取り上げたい作家、作品が多数あったのですが、このままではまとまりません。ですのでさらに省略させていただきます。

杉浦慶太-松島英理香(CASHI゜)
赤の斑点の写真。
いったい何を撮影するとあのような写真が撮れるのでしょうか?

*松島英理香さまよりコメントをいただきましたように、2009/11/1までアーティストの名前を村上友重として紹介しておりました。しかし、私の取り上げた作品は、杉浦慶太の作品でした。
村上友重さま、杉浦慶太さまには大変失礼をいたしました。申し訳ございませんでした。

◆近藤ケイジャン-天野智恵子(AIN SOPH DISPATCH)
ミノタウロスの像がカッコよかったです。

◆エリック・ディートマン-Marco BERENGO(Berengo Collection)
家の明るい部屋にまとめて数体置いておきたい。明るく、ポップな作品。

<現代アートのダイナミズムを体感できる>
この「ULTRA002」には、美術館で行われている展覧会にしか訪れたことがない方には、是非ご覧になっていただきたいと思います。
というのも、ここには現在進行形の芸術作品が多数あるからです。

多くの美術館で行われている展覧会は、評価の定まった作家の完成した作品が多く取り上げられます。
一方で、この「ULTRA002」で扱われている作家、作品はまだまだ評価が定まっていません。
とてつもない価値をもつものなのか、もしかしたら無価値なのか、こうした揺らぎが、現在進行形の芸術作品の特徴であり、魅力です。
評価の定まらない芸術は、いうなれば現在を生きている、のです。
また、「ULTRA002」には、美術館では決して見ることのない、値札のついた芸術作品がたくさんにあります。
それを見るだけでも、軽いショックを受けます。とても新鮮な感覚を味わうことができます。

もちろん、評価の定まった作家の完成した作品が死んでいる、というわけではありません。
それらの作品たちには、「時代を超えて生きている」という点に価値があるのですから。
逆に、「ULTRA002」の作品たちは、これからいったいどうなるのかわかりません。
そうした意味では、ほとんど価値がない作品といってもよいかもしれません。
しかし、時代に埋もれていってしまうのか、それとも今を生き抜き遠い未来でも評価されるのか、というダイナミズムは、古典的な作品をはるかに凌いでいます。
そして、その価値が揺れ動くダイナミズムは、現代アートの1つの楽しみだと思います。

ぜひ、その楽しみをみなさんに味わってほしいと思います。

私も来年は是非、しっかりとお金を準備して買う側として参加してみたいと思っています。
ダイナミックに価値が動く芸術作品の「価値を決める」という行為の一端に触れてみたい、そのように思っています。

<終わりに>
実はカタログにアンケートが挟まっていたことに気づかずに帰ってきてしまいました。
その中で【ベストウォール!賞】、つまり、1番よかったディレクターを選ぶという項目がありましたので、
それについてのみ参加したいと思います。
私の【ベストウォール!賞】は、

宮村周子(LaiRai)

です。
上記の買いたい作家として取り上げていないのに、「【ベストウォール!賞】か!」というツッコミがあるかもしれませんが、
1人の作家、神のぞみにフォーカスした展示はとてもすばらしく印象に残りました。

実はこの記事は、後日、アップデートしようとしていましたが「ULTRA002」の開催期間が短いこと、
なりよりもこの企画に面白さに刺激を受け、一気に書いて早めに公開することにしました。

それは、みなさんにも、是非、会場に訪れてほしいからです。

みなさんも、会場に足を運び、数々の作品ご覧になってみてください。
そして、【ベストウォール!賞】を選んでみてください!

【追記・2009/11/1】
一部、紹介をしたアーティストと作品の名前が異なっており、訂正しました。

【会場情報】
◆SPIRAL GARDEN
http://www.spiral.co.jp
◆TAB-エマージング・ディレクターズ・アートフェア「ULTRA002」
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/0D3E

【作家情報】

とても数が多いので簡単にまとめました。

◆芳木麻里絵(よしき・まりえ)
・株式会社レントゲンヴェルケ-gallery artists_芳樹麻里絵

◆藤井秀全(ふじい・ひでまさ)
・スパイラルバンク-インタビューVol.8 藤井秀全

◆笛田亜希(ふえだ・あき)
・YOKOHAMA Art Channel-Artist File_笛田亜希

◆窪田美樹(くぼた・みき)
・PEELER-people_窪田美樹インタビュー

◆筒井美馨(つつい・みか)
・KON’S TONE-筒井美馨個展

◆村上友重(むらかみ・ともえ)
・CASHI゜-Artists_村上友重

◆杉浦慶太(すぎうら・けいた)
・今度、行われる展覧会の情報です。CASHI゜-Exhibition_2009/10/30-「ニエプスの箱・右 / 左」

◆近藤ケイジャン(こんどう・けいじゃん)
略歴などが非公開だそうです。

◆エリック・ディートマン(Erik Dietman)
・BERENGO FINE ARTS-artisti_Erik Dietman(※外国のページにつながります)

◆神のぞみ(じん・のぞみ)
・宮村周子の展覧会リコメン「すご早!アート2.0」-アーツ・チャレンジ2009@愛知芸術文化センター開催中!

【次の予定】
◆青参道-アートフェア2009
http://www.aosando.com/
・TAB
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/C54E