Posts Tagged ‘東京オペラシティ’

「「エレメント」 構造デザイナー セシル・バルモンドの世界」展で構造の重要さを体験する

2月 14, 2010

先週、2010/2/6(土)に、東京オペラシティで開催中の「「エレメント」 構造デザイナー セシル・バルモンドの世界」を見に行きました。
私は、セシル・バルモンドのことをまったく知らず、「構造デザイナー」という職業が存在することも知りませんでした。
ですので、「構造デザイナー」というあだ名で呼ばれる、有名な建築家なのだと思い込んでいました。
しかし、実際は違いました。
セシル・バルモンドは、「構造デザイナー」という職業において、優れた才能をもつ存在として注目されています。

「構造デザイナー」とは、ある建造物を設計、建造する際に、その建造物の骨組みなどが十分な耐久力をもてるよう技術的なサポートをおこなう役目をもっています。
たとえば、建築家が自らの理想とする姿をした建造物をデザインしても、それが実現するにはさまざまな物理的な制約があります。
「構造デザイナー」は、その制約を念頭に置き、デザインされた建造物が、十分な耐久性が維持できるような骨組みの組み立て方、つまり構造を設計することで、建築家の理想的なデザインの実現をサポートする役割をになっているのです。

セシル・バルモンドは、そうした「構造デザイナー」として、数々の有名な建築家から依頼を受ける優れた才能を持っている優秀な人なのです。
ちなみに英語のwikipediaでは、セシル・バルモンドはstructural engineerとして紹介されています。
ですので、「構造デザイナー」という言葉が正確に日本語として使用されているかは、若干、疑わしい部分があります。
エンジニア、すなわち技師、技術者ですので、「構造デザイナー」というのは、アーティスティックな部分を強調して、この展覧会独自の言葉なのかもしれません。

<構造はモノにとって力強く、重要な存在>
ソフトウェア開発は、よく建築となじみが深い、とされています。
その一端をあらわすものとして、アーキテクトと呼ばれる職業がソフトウェア開発にも存在することがあげられます。
かなり乱暴な説明になりますが、ソフトウェア開発におけるアーキテクトは、技術的なリーダーの役割をにないます。
建造物がその土地や周囲の環境、ならびに 建材の材質に大きな影響を受けるように、ソフトウェアは、使用するOS、ミドルウェア、開発言語などの影響を受けます。
こうした要素を作成するソフトウェアにあわせて適切に取捨選択することが、ソフトウェア開発におけるアーキテクトの役割です。
また、全体的なプログラムのつながり、すなわち構造を設計するのも、アーキテクトの仕事であり、この際には、デザイン・パターンというものも用いられます。
このデザイン・パターンという考え方もまた、建築家であるクリストファー・アレクザンダーの建築技法に基づいています。

このように、ソフトウェア開発は、建築ととてもなじみ深いといわれています。
ただ、ソフトウェア開発におけるアーキテクトは、建築における建築家と「構造デザイナー」の両方の役割をになっているようにも思えますが。

私が、セシル・バルモンドの作品の中でも魅せられたのは、『H_edge』という作品です。
チェーンと、弧を描いたプレートという、バラバラな状態の部品を規則的に組み合わせることで、1つの自立した柱や壁を築く作品です。
この作品を観ると、セシル・バルモンドが単なる技師としてではなく、ある美学と企てをもって構造設計に携わっていることがわかります。
それほど、幻想的な世界が構築されるのです。

何より、強く印象付けられたのは、バラバラの部品が構造を規定することで、ひとつのものとして自立している、という事実でした。
考えてみれば、この世界の建造物はもとより、大半のモノは一つ一つの部品が「設計」された構造の元に統合されて、ひとつのモノとして自立しています。
今この文章を書いているパソコンしかり、住んでいるアパートしかり。
普段、完成した姿をみているとそれらがバラバラだったときを意識することはありません。
しかし、『H_edge』という作品をみていると、ひとつのものが、元はバラバラの存在で、それが「構造」という一つの要素でつながっていることを強く意識させられます。
そして、完成されていると思っていたものが、「構造」という1つの要素によって支えられていると思うと、か弱く繊細な存在であるように思えてくるのです。
一方で、完成された姿を支える「構造」の力強さも感じることができます。

職業柄、「構造」という言葉を良く聞き、重要なものだと理解しているつもりでした。
ですが、それはあくまでも聞いた情報を元に想像した世界に過ぎないものでした。
今回、『H_edge』という作品を通じて、「構造」があるモノの姿を規定する力の強さ、そして、その重要性を体験できたと思います。

ソフトウェアエンジニアの中でも、「構造」の重要性を聞いて知ったつもりになっている、という方は意外に多いのではないでしょうか。
そのような方は、是非、会場に足を運んでみてください。
モノにおける「構造」の重要性が体験的に理解できると思います。

【会場情報】
◆東京オペラシティ-「「エレメント」 構造デザイナー セシル・バルモンドの世界」展
http://www.operacity.jp/ag/exh114/
◆TAB-「エレメント 構造デザイナー セシル・バルモンドの世界」展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/3B6D

【作家情報】
◆セシル・バルモンド(Cecil Balmond)
・Wikipedia-セシル・バルモンド
・Wikipedia-Cecil Balmond
【次の予定】
◆未定
※引越し作業中につき展覧会へはなかなかいけそうにないです。。。

ランキング参加中。気に入ったら一押しお願いします!
人気ブログランキングへ

広告

「ヴェルナー・パントン展」へ穴の開いた靴下で行ったことを悔やむ

12月 4, 2009

<盛況な会場>
2009/11/23(月)は、東京オペラシティで開催中の「ヴェルナー・パントン」展へ行ってきました。
開場時間の11時とほぼ同時刻に行ったのですが、若い人たちを中心に結構な混み具合でした。
私はヴェルナー・パントンという人を、この展覧会へ行くまで知りませんでした。
が、会場の混み具合を見て、もしかしてものすごく有名な人なのかな、と認識を改めました。

<奇妙な調和をもった世界観>
ヴェルナー・パントンの家具は、どこかシステマティックで、近未来的な印象を受けました。、
家具にプリントされた模様は丸や四角のパターンであったり、機械的で精密な計算によって切り出されたようなデザインであったりする作品は、古びた印象はいっさいありませんでした。
しかし、購入したら「どこにどうやって置こうか?」と悩まされそうな前衛的なデザインな家具は、純和風な場所はもちろん、パントンの出身地であるデンマークでも収まるところはなかったのではないでしょうか。
家具を単体を見て購入してしまった場合、実際に家においてみると収まりが悪く、どこにおいてよいかわからない、という羽目になりそうです。

しかし、パントンの凄さはその作品の単体のデザインだけでなく、全体の世界観に調和があることだと感じました。
この展覧会のメインとなるのは、実際にパントンが1970年にケルンで製作した「ヴィジョナ2」という展覧会の再現です。
この「ヴィジョナ2」を再現している空間を含めて、フライング・チェアやUFOのような照明が飾りつけられた空間が実に凄いのです。
一見、ビカビカした派手な色づかいと奇抜なデザインの家具や照明は、単体でも大きな存在感をもっています。
そのため、どこかのクラブでないと収まりがつかない、落ち着きのない空間を生み出しそうに感じます。
ですが、そんなことはありません。
奇抜なデザインのイスは、その滑らかな形で見ていると落ち着きを感じます。
派手な色使いをされた照明は、実に柔らかな光を発して、周囲をやさしく照らします。
奇抜で、大胆なデザインと色使いがじつに見事に調和しているのです。

強烈な個性をもちながら、その個性を統一する世界観をもつパントン。
パントンは、「デザイン界のピカソ」というあだ名もつけられたようですが、そんな必要はいっさいない、と感じました。
それほど、豊かで個性的な才能をもったアーティストだと思います。

<靴下は確認して>
「ヴェルナー・パントン」展のメインとなる「ヴィジョナ2」を再現する会場は土足厳禁です。
私は、このことを知らずに当日、穴の開いた靴下を履いていってしまいました。。。orz
そのため、靴下の穴が気にしなってしまい、気もそぞろ。
展覧会に集中できませんでした。

もしも足を運ばれる方は、私のようなことがないように、しっかりと靴下を確認してから会場へ足をお運びください。

【会場情報】
◆東京オペラシティ-ヴェルナー・パントン展
http://www.operacity.jp/ag/exh111/index.html
◆TAB-「ヴェルナー・パントン」展
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/E961

【作家情報】
◆ヴェルナー・パントン(Verner Panton)
・hhstyle.com-デザイナー_Verner Panton

【次の予定】
◆「ラグジュアリー:ファッションの欲望」展 @東京都現代美術館
http://www.kci.or.jp/exhibitions/luxury/
◆TAB-「ラグジュアリー:ファッションの欲望」特別展示: 妹島和世による空間デザイン/ コム・デ・ギャルソン
http://www.tokyoartbeat.com/event/2009/4B1A

「インタートラベラー神話と遊ぶ人」で遊ぶ人

9月 13, 2009

<視覚と嗅覚を刺激する作品に酔った>

2009年9月5日(土)に、初台の東京オペラシティアートギャラリーで開催中の鴻池朋子さんの個展へ行きました。
個展のタイトルは「インタートラベラー神話と遊ぶ人」です。

会場の東京オペラシティは京王線・京王新線の初台駅の近くにあります。駅から直結の道で結ばれており、案内にしたがってゆけば迷うことなくたどり着けます。
私が会場についたのは開館時間11:00を少し過ぎたころでした。
開館時間から時間がたっていないためか、人影はまばらでした。
また、少し強い太陽の光がガラス張りになっている館内に降り注でおり、ゆったりとした開放感を感じました。

展覧会全体はタイトルに<神話と遊ぶ人>とあるとおり、遊び心のあふれる展示になっていました。
『隠れマウンテン』、『バージニア-束縛と解放の飛行』、『Earth Baby』など巨大な作品が空間を大きく使って展示され、作品の魅力をたっぷりと味わうことができます。

特に私の印象に残ったのは、『シリウスの曳船』など巨大な4つ絵画が四方に飾ってある小部屋です。
1~4章の連作となっている絵画群の魅力はもちろんのこと、それ以上にびっくりさせられたのは部屋の香りです。
小部屋の中心に数本のユリの花が活けてあり、その花が発する強い香りが部屋の中に漂っています。
香りが少々強いので、その場から離れたいのですが、巨大な絵をすべて視界に納めようとすると、どうしても部屋の中心から眺める必要があります。そのため、そのユリの香りから逃れられません。
そして、その香りをかぎながら一連の作品を見ていると、描かれている非現実的な世界が現実の世界に迫ってくるように感じられます。
まるで、香りが絵画とその小部屋という現実の空間の媒介を果たし、絵画と現実の世界をつなげているように感じられました。

美術作品というと、色彩や形によって視覚に訴える作品、音楽や言葉によって聴覚に訴える作品、さらにビデオ映像のように視覚と聴覚に訴える作品などが一般的だと思います。
しかし、絵画という視覚に訴える作品に、ユリの香りという嗅覚に訴える展示方法を味わったのは始めてでした。
ユリの花が置かれた正確な意図はわかりませんが、視覚と嗅覚に同時に訴えるという展示方法に感心させられると同時に、その展示方法が生み出した世界観に魅せられてしまいました。
また、このほかにも狭くて暗い通路を通ったり、低くつるされているカーテンの下を通ったりと、展示方法に遊び心があふれています。

展示会では、上記の作品以外にも遊び心のある作品、展示方法が随所に見られます。
そのため、会場には作家の世界観と遊び心が充満しています。
また、たくさんの人の作品が集まっている展覧会も面白いですが、一人の作家の世界にどっぷり浸かるという魅力が個展にはあります。
「インタートラベラー神話と遊ぶ人」では、鴻池朋子さんの世界にどっぷり浸かることができます。
皆さんもぜひ、鴻池朋子さんの遊び心あふれる世界に浸ってみてください。

<会場情報>
東京オペラシティ・アートギャラリー
〒 163-1403 東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL 03-5353-0756
http://www.operacity.jp/ag/

<作家情報>
◆鴻池朋子(こうのいけ・ともこ)さん
以下で、数点の作品とインタビュー記事が読めます。

・MIZUMA ART GALLERY-アーティスト紹介
http://mizuma-art.co.jp/artist/0100/

・commonsphere.jp-インタビュー
http://commonsphere.jp/feature/interview/kounoike/01_01.php

・TOKYO ART BEAT-鴻池朋子 インタビュー(※movieです)
http://www.tokyoartbeat.com/tablog/entries.ja/2009/09/interview-tomokokounoike.html

<次の予定>
◆「原美術館コレクション」展
・原美術館
〒 140-0001 東京都品川区北品川4-7-25
TEL 03-3445-0651
http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html